- 再生可能エネルギー導入
- 省エネ活動推進
- 水資源利用の効率化
- 大容量・高エネルギー消費効率製品の開発
- BCM・SCMの強化
気候変動
キオクシアグループは、脱炭素社会の実現に向けて、気候変動をサステナビリティ重要課題(戦略マテリアリティ)の一つに位置付け取り組んでいます。バリューチェーンを通じて、事業活動と製品ライフサイクルの両面から、温室効果ガス排出と事業で使用するエネルギーを削減していきます。
2050年温室効果ガスネットゼロ
キオクシアグループは2023年4月に、2050年度までに事業活動における温室効果ガスネットゼロとする目標を設定しました。グローバルな事業活動にともなう温室効果ガス排出量(事業場からの直接排出(Scope1)、および購入エネルギー使用に起因する間接排出(Scope2))のネットゼロ(温室効果ガスの排出量と吸収・除去量を差し引きゼロ化)を目指します。
購入エネルギーについては、2040年度までに再生可能エネルギーの使用比率を100%にすることを目標に掲げています。2023年1月から自家消費型の太陽光発電システムを導入しており、発電設備能力は国内半導体工場では最大規模*1となっています。今後も本システムの設置拡大に加えて、非化石証書*2の購入によるエネルギーの脱炭素化を行います。
事業場から直接排出される温室効果ガスについては、PFC等ガス*3を除害する装置を、対象設備に2011年以降100%設置しています。
従来から実施している省エネルギー(以下、省エネ)活動とあわせて、事業活動を通した気候変動対策をこれからも進めていきます。
- *1 2023年11月現在(当社調べ)。
- *2 再生可能エネルギーなど、発電時にCO2を排出しない非化石電源の環境価値を取り出し取引できるようした証書。
- *3 半導体製造時に使用する地球温暖化係数の高い代替フロンガス。当社グループの使用物質ではCF₄、C₄F₈、CHF₃、SF₆、NF₃、CH₂F₂、CH₃F、CH₄、N₂Oが対象。
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応
キオクシアグループは2021年6月に、TCFD*4最終報告書(TCFD提言)への賛同を表明しました。事業における気候関連の影響度を的確に把握し、ステークホルダーへ情報を開示し、双方の理解を深めることが、企業の持続的な成長に不可欠と考え、TCFDに沿った取り組みと情報開示を積極的に進めています。
- *4 TCFD:金融安定理事会(FSB)が設置した気候関連財務方法開示タスクフォース。気候関連のリスクと機会に関する情報開示を推進する取り組み。
ガバナンスとリスク管理
キオクシアグループはサステナビリティ推進体制のもとで、気候変動に関する取り組みを行っています。
代表取締役社長が議長を務めるサステナビリティ戦略会議では、執行役員が戦略・方針の審議および施策達成度の確認を行い、重要事項に関しては取締役会に諮っています。サステナビリティ担当執行役員を委員長とするサステナビリティ推進委員会では、サステナビリティ戦略会議で決定された戦略・方針に基づき、重要テーマやKPI*5等を策定・討議しています。また、本会議体の下部に、重要なサステナビリティ課題に組織横断で取り組むタスクフォースを設置し、進捗の報告や方向性の確認を本会議体で行っています。2022年度は温室効果ガスネットゼロの方針と、TCFD提言に基づいた「シナリオ分析」、「気候関連リスクと機会の分析」、「戦略・指標・目標」について検討しました。
- *5 KPIは、Key Performance Indicatorの略で重要業績評価指標のこと。
サステナビリティ推進体制については、「サステナビリティ・マネジメント」をご覧ください。
戦略
シナリオ分析
キオクシアグループは、国際エネルギー機関(IEA)等が定める2℃シナリオと4℃シナリオ*6を使用して、気候変動が当社グループの事業にもたらす影響について、ステークホルダーや事業ごとにインパクト分析を行いました。2℃シナリオでは、政府による制度整備・規制強化および顧客等のステークホルダーの志向の変化の影響が大きいと考えられます。例えば、工場の低炭素化にかかるコスト増加や製品使用時のエネルギー消費効率向上・大容量化にともなう研究開発費の増加を想定しています。4℃シナリオでは、材料価格高騰や自社拠点への物理的リスクの顕在化も予測しています。
- *6 2℃シナリオ、4℃シナリオとは、IEA等から発行される気候関連シナリオのこと。各シナリオにおいて、気温上昇を抑えるために必要な経済施策、またその温度上昇時に想定される環境被害などを示しています。
リスクと機会
キオクシアグループは、シナリオ分析をもとに2030年に想定される外部環境を踏まえたリスクと機会を下表の通り検討しています。
移行リスクとして、炭素税導入による電力コスト増加や当社グループの生産拡大にともなうPFC等ガスを除害する装置の導入コスト増加などを想定しています。物理的リスクとしては、外気温上昇にともなうクリーンルームの温度調整のための空調コスト増加などを想定しています。
機会としては、使用時のエネルギー消費効率を向上した製品によるビジネスチャンス拡大や省エネ化促進による製造設備の電力コスト削減などの移行機会を想定しています。
気候関連のリスクと機会が事業に及ぼす影響を明確にするため、タスクフォースにて財務上のインパクトを具体的に算出しています。当社グループの事業拡大やステークホルダーからの気候変動対応要望を背景として、研究開発やお客様との取引、そして電力コストにおいては、シナリオに関わらず、リスク・機会の両側面から財務上の影響が大きいと考えています。しかし、これらの事項にかかわるPFC等ガス除害装置と再生可能エネルギーの導入コストは、財務上の影響が比較的小さいと考えています。
気候変動においてもリスクへの対応を進め、同時に機会として適応できるよう努めていきます。
※表を左右にスクロールすることができます。
外部事象 | リスク | 機会 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
属性 | 財務インパクト | 属性 | 財務インパクト | |||
カーボンプライシングの導入 | <移行リスク> 政策・法規制 |
|
― | ― | ||
再生可能エネルギーへの転換 | <移行リスク> 技術 |
|
<移行機会> エネルギー源 |
|
||
製造時の省エネ厳格化・促進 | <移行リスク> 技術 |
|
<移行機会> 資源効率 |
|
||
ステークホルダーの環境意識の向上 | <移行リスク> 市場 |
|
<移行機会> 製品 |
|
||
<移行リスク> 評判 |
|
<移行機会> 市場 |
|
|||
低炭素製品への転換 | <移行リスク> 評判 |
|
<移行機会> 市場 |
|
||
<移行リスク> 技術 |
|
|||||
電力インフラの進展 | <移行リスク> 技術 |
|
<移行機会> エネルギー源 |
|
||
異常気象激甚化 | <物理リスク> 急性 |
|
― | ― | ||
水不足 | <物理リスク> 慢性 |
|
― | ― | ||
気温の上昇 | <物理リスク> 慢性 |
|
― | ― |
- *7 Business Continuity Managementの略で、緊急事態の発生時においても事業を停止させることなく(あるいは停止しても短期間で復旧させて)組織への影響を最小限に抑えるための対策計画の策定から、その導入・運用・見直しという継続的改善を含む、包括的・統合的な事業継続のためのマネジメントのこと。
指標と目標
キオクシアグループは、2050年温室効果ガスネットゼロ目標のもとで、エネルギー使用量や環境負荷、製品に関する指標を設定しています。指標達成度の確認は、半年ごとに開催する環境マネジメントレビューで行っています。例として、エネルギー使用量 (Scope2)に関しては、前年度排出量のうち1%を削減する目標とし、省エネ活動を推進しています。詳細は、後述の「バリューチェーンにおける温室効果ガス排出実績」や「気候変動への適応の取り組み」をご覧ください。
また、2040年度までの再生可能エネルギーの使用比率100%を目指しています。省エネ活動と非化石証書の活用も含めたエネルギー・ポートフォリオの検討により、事業の拡大に合わせて最適かつ安定した再生可能エネルギーの調達に努めます。今後も、カーボンニュートラルな都市ガスの導入や、工場への再生可能エネルギー設備の設置を推進していきます。
バリューチェーンにおける温室効果ガス排出実績(2022年度)
キオクシアグループの事業活動における2022年度の温室効果ガス(Scope1,2,3:CO2換算)排出量は下表のとおりです。下表の実績の対象範囲は、キオクシア株式会社(本社、横浜テクノロジーキャンパス、四日市工場)、キオクシア岩手株式会社、Solid State Storage Technology Corporation(以下、SSSTC)です。
表中のハイフン(ー)は対象外を表しています。
Scope1(直接排出)
CO2排出量(t-CO2) |
算定枠組み |
---|---|
680,600 |
自社での燃料使用や事業プロセスによる直接排出 |
Scope2(エネルギー起源の間接排出)
CO2排出量(t-CO2) |
算定枠組み |
---|---|
1,899,400 |
自社が購入した電気・熱・蒸気等の使用にともなう間接排出 |
Scope3(その他の間接排出)
カテゴリー区分 |
CO2排出量 |
算定枠組み |
---|---|---|
1. 購入した製品・サービス |
3,043,200 |
原材料、部品、容器などが製造されるまでの活動にともなう排出 |
2. 資本財 |
1,450,366 |
自社の資本財の建設・製造にともなう排出 |
3. Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 |
348,378 |
調達燃料・電力の上流工程にともなう排出 |
4. 輸送・配送(上流) |
179 |
国内の製品物流、生産に係る物流の排出合計(サプライヤーから自社への物流や、海外での製品物流等は除く) |
5. 事業活動から出る廃棄物 |
33,863 |
自社で発生した廃棄物の処理に係る排出 |
6. 出張 |
1,421 |
従業員の出張にともなう排出 |
7. 雇用者の通勤 |
11,983 |
従業員が通勤する際の移動にともなう排出 |
8. リース資産(上流) |
― |
― |
9. 輸送・配送(下流) |
― |
― |
10. 販売した製品の加工 |
― |
― |
11. 販売した製品の使用 |
521,167 |
製品使用時の電力消費にともなう排出 |
12. 販売した製品の廃棄 |
― |
― |
13. リース資産(下流) |
― |
― |
14. フランチャイズ |
― |
― |
15. 投資 |
― |
― |
Scope3 (Total) |
5,410,557 |
直接排出Scope1排出内訳
事業におけるエネルギー使用と温室効果ガス排出の実績(2022年度)
社会における情報データ量の飛躍的な増加に応えるため、キオクシアグループは計画的に設備投資を行い、必要な生産能力を確保しています。これにともないエネルギー使用量は増加傾向にあります。
キオクシアグループのエネルギー使用量と温室効果ガス(Scope1+2)の排出量の推移は以下のグラフの通りです。2040年度までの再生可能エネルギーの使用比率100%と2050年温室効果ガスネットゼロに向けて、太陽光発電システムの導入や使用する電力の一部を対象に非化石証書を購入するなど取り組みを進めています。
エネルギー使用量推移(MWh)
- 2022年度の再生可能エネルギーの使用比率は0.1%です。
- 対象はキオクシア株式会社、キオクシア岩手株式会社、SSSTC(SSSTCは2021年度以降)。
Scope1 + 2 排出量推移(t-CO2)
- 対象はキオクシア株式会社、キオクシア岩手株式会社、SSSTC(SSSTCは2021年度以降)。
気候変動への適応の取り組み
キオクシアグループは、特定されたリスク・機会とそれらの影響を考慮し、バリューチェーンを通じて気候変動への対応を進めています。
「製品開発」の側面
ストレージ製品の市場では、低消費電力型製品のニーズが非常に高く、これらの製品開発による販売機会の拡大が見込まれます。当社グループは、製品使用時のエネルギー消費効率と記憶容量を向上させる高集積化技術の研究開発に取り組んでおり、2017年度を基準とした1GB処理あたりのエネルギー消費量を2025年度までに50%削減するという高い目標を掲げています。
詳細は「製品を通じた環境貢献」をご覧ください。
「製造事業場・研究・技術開発施設での運用」の側面
キオクシアグループは、2050年温室効果ガスネットゼロ目標のもとで、直接排出(Scope1)と購入エネルギー使用に起因する間接排出(Scope2)の両方で温室効果ガス排出削減を推進しています。
直接排出(Scope1)の削減に関しては、当社グループは地球温暖化係数の高いPFC等ガスの除害装置の設置を積極的に進めています。
2011年以降、対象設備にPFC等ガス除害装置を100%設置しています。2020年から2022年にかけての除害装置導入数は年平均で170台を超えており、2017年度以降の除害効果は累計424万t-CO2になります。
直接排出Scope1におけるPFC等ガス除害装置の設置効果(2017年度からの累積:t-CO2)
- 対象はキオクシア株式会社、キオクシア岩手株式会社、SSSTC(SSSTCは2021年度以降)。
また、研究開発も環境に配慮した施設で行っています。研究・技術開発拠点として2023年に竣工した横浜テクノロジーキャンパス技術開発新棟「Flagship棟」(横浜市栄区)は、当社グループで初めてZEB ready*8を取得した建築物です。同じく新設した「新子安テクノロジーフロント」(横浜市神奈川区)では、環境に配慮した設計となっているクリーンルームを採用しています。
- *8 Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと。外皮の高断熱化および高効率な省エネ設備を備えた建築物を指します。再生可能エネルギーを除き、基準となる一次エネルギー消費量を50%削減することで、建築物の省エネ性能を評価する第三者認証制度BELSにより認証されます。
購入エネルギー使用に起因する間接排出(Scope2)に関しては、再生可能エネルギーの導入による削減を行ってまいります。キオクシアグループの製造事業場では、エネルギー使用の合理化・効率化のため、日本国内の「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)」に基づき、前年度の総エネルギー使用量(Scope2)の1%を削減する目標を設定しています。2022年度は、各種省エネ活動により、目標25千t-CO₂/年以上の削減に対して実績は31千t-CO₂/年の削減効果となり、目標を達成しました。2017年度から2022年度までの省エネ活動による削減効果は、累積で約13万t-CO₂になります。
各事業場では省エネ・効率化を推進するために、改善活動や新技術の導入に取り組むとともに、後述の省エネルギー(省エネ)委員会において重点的に取り組むアイテムを定期的に取り上げ、改善効果や進捗を確認しています。
また、当社グループのフラッシュメモリは、AIやIoTなどの最先端デジタル技術を導入したスマートファクトリーで生産されています。IoTで収集されたビッグデータと完全自動制御設備は、ものづくりにおける品質と効率を高め、製造時の環境負荷低減にも貢献しています。
省エネルギー委員会の活動
キオクシアグループは事業活動におけるさらなる省エネの推進を目的として、キオクシア株式会社四日市工場、キオクシア岩手株式会社に省エネ委員会を設置し、対象設備や製造工程ごとに部門横断で部会を設置し、活動しています。取り組み例として、キオクシア株式会社四日市工場の電気室では、構内で運転している電気機器が高温で故障するのを防ぐため、空調機を使用しています。この運用条件を見直し、夏季以外は低温の外気を取り入れることで空調機への負荷低減が可能になりました。この取り組みにより、年間80t-CO2の削減が見込まれます。
また、クリーンルームや設備・装置類の温度を一定に保つために、水による温度交換も行っています。キオクシア岩手株式会社では、製造装置の冷却水の温度を下げて流量を減らす検討を行いました。冷却効果を維持しながら冷却水用ポンプへの負荷を減らすことが可能となり、全体の電力を削減しました。これにより、年間523t-CO2の削減と節水につながりました。
さらに、半導体の品質確保に欠かせないテスト工程においても、テストの項目と工程の見直しを行った結果、テスト装置の台数を減らすことができ、電力の削減を実現しました。
「バリューチェーン」の側面
地球温暖化など気候変動の進行にともない、台風や大雨による水害などの自然災害が毎年のように発生しています。これにより、部材メーカーの生産や物流が影響を受け、キオクシアグループの生産体制や製品供給に障害を来すリスクが顕在化しています。当社グループでは、すべての拠点をBCMの対象とし、自然災害を含むさまざまなリスクを想定した対応体制を整備しています。BCM方針のもと、平時より部材や製品の状況把握や調達取引先の複数化に努めています。有事の際には影響を迅速に把握するとともに、早期復旧に向けて連携する体制を整備しており、事業に及ぼす影響の最小化に努めています。
また、当社グループのお客様においても気候変動対応は重要な課題となっており、コミュニケーションの中で課題と対応の共有を行っています。環境貢献製品の市場拡大と脱炭素社会の実現に向けて、バリューチェーン全体で取り組んでいきます。
気候変動に関する社外イニシアティブへの参加
キオクシアグループは、気候変動への対応を進めるとともに、業界団体への参画などを通じて情報収集や政府への提言を行っています。
キオクシアホールディングス株式会社では、2021年のTCFDへの賛同表明に続き、2022年よりTCFDコンソーシアムに参加しています。
また、キオクシア株式会社では、電子機器産業の業界団体である電子情報技術産業協会(JEITA)の環境部会の会員として、エネルギー・温暖化問題における課題解決に向けて取り組んでいます。脱炭素社会を目指す企業グループであるJCLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)の賛助会員として、パリ協定における1.5℃目標実現に向けた施策や行政への提言の検討にも参加しています。