自然資本・生物多様性
キオクシアグループは、生物多様性が持続可能な社会の基盤であり、気候変動や資源制約といった地球規模の課題に対応する上で極めて重要な資本であると認識しています。当社は、健全な自然環境の維持が人々の暮らしや社会、企業活動の持続可能性を支えるものであると捉え、事業活動を通じて生物多様性の保全と自然資源の持続的な利用に貢献する取り組みを推進しています。
キオクシアグループは、高効率なエネルギー消費と高速なデータ処理を実現する大容量フラッシュメモリ製品を継続的に提供することで、環境負荷の低減に努めています。また、工場での適切な水資源管理や環境保全活動を通じて、半導体メーカーとしての特性を活かし、生物多様性の保全を推進していきます。そして、「キオクシアグループ 環境方針」のもと、当社はTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)などの国際的な動向にも配慮し、実行可能かつ段階的な対応を進めていきます。
ガバナンスとリスク管理
自然資本・生物多様性への対応は、キオクシアグループのサステナビリティ推進体制のもと、経営層が関与し戦略的に進めています。代表取締役社長が議長を務めるサステナビリティ戦略会議では、重要テーマの審議や施策の評価を行っています。
また、自然関連課題への対応にあたっては、タスクフォースにおいて関連部門が連携して具体的な目標の設定や実行を担っています。さらに、TNFD提言に基づき、リスクと機会の分析、シナリオ評価、指標・目標の検討、モニタリングを行い、事業活動と自然環境との関係性を的確に把握し、持続可能な経営基盤を構築することを検討しています。
推進体制については、「サステナビリティ・マネジメント」をご覧ください。
戦略
キオクシアグループでは、自然資本および生態系サービスの重要性を認識し、TNFDの提言に基づいた開示に取り組んでいます。2024年度には、キオクシア(株)四日市工場、キオクシア岩手(株)、Solid State Storage Technology Corporation(以下、SSSTC)を対象に、「LEAPアプローチ」のLocate(発見)フェーズ(影響を受けやすい地域の特定)を実施しました。今後は、Locateについて開示に向けた精査を進めるとともに、Evaluate(診断)・Assess(評価)フェーズに進み、自然資本への依存・影響の特定・評価、リスク・機会の整理を進めていきます。
キオクシアグループは、自然資本への対応を中長期的視点で捉え、最初は定性的な評価を通じて現状把握を進め、科学的知見や外部イニシアティブの動向を踏まえ、段階的に指標や目標の整備を進めます。自然と共生する持続可能な社会の実現に向け、今後も取り組みを進めていきます。
指標と目標
キオクシア国内グループ会社では、自然資本に関する指標と目標を設定しています。2017年度の製造時における製品の容量当たりの環境負荷を100%とした相対値で設定した環境目標に基づき、エネルギー起源CO₂やPFC等ガス排出量、廃棄物量、取水量、化学物質排出量などを削減し、2024年度もすべての目標を達成しました。
今後、LEAPアプローチの結果を踏まえて、自然資本に関する指標・目標の精査を行う予定です。
詳細は、「環境負荷の状況、環境目標、実績」をご覧ください。
活動
キオクシアグループは、操業を行う地域の豊かな生態系と共存するため、生物多様性保全と社会貢献を目的とした活動を進めています。
森と川の生き物を見守る
キオクシア(株)四日市工場は、三重県立四日市西高等学校自然研究会と三重県立桑名高等学校MIRAI研究所が進める「フクロウ保護プロジェクト」に参画しています。地域の豊かな自然環境を次世代に継承したいと願う本プロジェクトの活動趣旨に賛同し、観察機材などの提供を通じて、フクロウの保護活動を支援しています。
キオクシア岩手(株)では、岩手県の水生生物調査*1に参加しました。2024年に同社が調査した岩手県南西部を流れる和賀川は、指標水生生物(ヒラタカゲロウなど)の確認により、きれいな水環境であることが判定されました。この活動を通じて、水域生態系の保全と地域との協働を進めています。
- *1 川にすむ生き物の種類を調べることで、水質(水のよごれの程度)を階級Ⅰ(上流域の渓流環境、きれいな水)~階級Ⅳ(大変汚れた水)の4段階に分けて判定する調査です。採集した指標生物ごとに、配点ルールにより、点を加えていきます。点数を合計し、最も点数が高かった水質階級をその地点の水質階級とします。ヒラタカゲロウは水質階級Ⅰに相当します。
海、山、川の環境を保全する
キオクシア(株)四日市工場は、絶滅が危惧されるアカウミガメ*2の産卵環境の保全を目的として、四日市市の楠地区まちづくり検討委員会とNPO法人四日市ウミガメ保存会による吉崎海岸(三重県四日市市楠町)の清掃活動に参加しています。2024年も同工場の従業員やその家族など合わせて200名以上が参加し、アカウミガメが産卵できる環境を守るとともに、その生態系や保全活動の重要性などについて理解を深めました。
SSSTCでは、海岸周辺の生物多様性保全と山の保水力を高める活動を行っています。2025年3月に同社の従業員40名が参加した台湾・新竹での活動では、頭前川河口の清掃で300kg以上のごみを回収しました。また、峨眉山では200本の台湾原産の樹木を植林しました。
- *2 近い将来、野生での絶滅の危険性が高いものとして、環境省レッドリストの絶滅危惧種カテゴリーに分類されています。
地域の文化と自然を育む
岩手県北上市は、桜の名所である展勝地公園*3の桜を次の100年につないでいくため、桜の世話を行う「桜守」を育成する桜守事業活動を実施しています。キオクシア岩手(株)は、地域の文化的・生態的資源の継承に賛同し、本事業の「桜守講習会」に参加しています。2024年に実施された講習会では、同工場の従業員やその家族ら合わせて約30名が若木の剪定や施肥などを行いました。
キオクシアグループの研究・技術開発拠点である横浜テクノロジーキャンパスは、神奈川県横浜市栄区の「さかえグリーンサポーター」活動に参加しています。2024年は、延べ20名の従業員が竹林の間伐や田植えなどの作業をとおして、地域の豊かな緑や水の継承に貢献しました。
SSSTCでは、地域の人々が生物多様性について学ぶ機会を支援しています。台湾・新竹市動物園への支援を通じて、小学生が動物について学ぶサマースクールの開催や、動物園への設備の提供に協力しています。
キオクシアグループでは、これらの活動を通じて、自然環境と地域文化を守る取り組みを継続しています。
- *3 展勝地公園は、2021年に開園100周年を迎え「日本さくら名所100選」にも選定されている桜の名所です。
働く環境の緑を豊かにする
製造事業場では、従業員の環境意識や構内の美観の向上を目的として、構内の緑化活動に部門横断で取り組んでいます。
簡単に食べられない? サステナブル弁当
SSSTCでは、地域で収穫された野菜を使用した弁当を従業員に隔週で提供しています。従業員は環境保護や資源などのサステナビリティに関するクイズに正解すると、弁当を受け取れます。弁当をとおして、楽しみながら環境意識を高め地産地消を身近に感じられる取り組みです。
これらの活動は、キオクシアグループの自然との共生を目指す企業姿勢を体現するものであり、今後も地域と協働しながら、生物多様性と調和する事業運営を継続していきます。