人権の尊重

キオクシアグループは、企業、社会の持続的発展のためには、企業活動における人権への配慮が必要不可欠であると認識しています。サプライチェーンを含む当社グループの事業活動にかかわるすべての人々の人権を尊重する責任を果たすため、人権尊重をサステナビリティ重要課題(戦略マテリアリティ)の一つに定め、取り組みを推進しています。

人権の尊重に関する方針

キオクシアグループは、ミッション・ビジョンおよびグループ行動基準に基づいて、人権尊重における当社グループの責任を明確にするものとして、2021年に「キオクシア人権方針」を策定しました。本方針では、国際人権章典などで国際的に認識されている人権を最大限尊重し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則(以下、指導原則)」などの国際規範に沿った人権尊重の取り組みを推進することを定めています。本方針は重要な規則類の一つとして、キオクシアホールディングス(株)の取締役会決議を経て制定しています。
上記に加え、RBA(Responsible Business Alliance)*1行動規範の趣旨に沿った事業遂行(自社サステナビリティ活動の推進、および調達取引先への要請)に取り組んでいます。

  • *1 RBAは、グローバルサプライチェーンにおける社会的責任を推進する企業同盟。

キオクシアグループにおける人権方針の位置づけ

キオクシアグループにおける人権方針の位置づけ キオクシアグループにおける人権方針の位置づけ

人権の尊重に関する推進体制

キオクシアグループは、事業活動における人権リスクを最小化し、人権を尊重する責任を果たすため、推進体制の構築・整備を進めています。
キオクシア(株)では、人事総務部に人権啓発担当を配置し、人事総務担当執行役員を人権啓発推進責任者に定めています。人権啓発推進責任者は、キオクシア人権方針の社内における浸透と、それが遵守されているかを監督しています。また、部門横断で構成される多様性・人権デューデリジェンス・タスクフォースでは、指導原則の主旨に沿った取り組みを立案し、人権啓発担当が関係部門やグループ各社と連携して、これを推進しています。
また、これらの取り組みはサステナビリティ・マネジメントの一環として、サステナビリティ推進委員会で審議されており、重要な事項についてはサステナビリティ戦略会議をとおして、取締役会に上程することとしています。

人権デューデリジェンス

キオクシアグループは、事業活動とバリューチェーン全体で影響を受ける人々の人権尊重のため、指導原則に則した人権デューデリジェンスを実施しています。以下のように、事業活動における人権リスクの特定と評価、防止・軽減の仕組み構築と適切な措置の実施、追跡調査、情報開示のサイクルを構築し、人権リスクの最小化に努めています。

キオクシアグループの人権デューデリジェンスプロセス

キオクシアグループの人権デューデリジェンスプロセス キオクシアグループの人権デューデリジェンスプロセス

人権リスクの特定・評価

キオクシアグループは、バリューチェーンにおける人権に対する負の影響を洗い出し、評価しています。さらに、当社グループでは、RBA行動規範をサステナビリティ活動の基準として活用しセルフアセスメントを実施しています。調達取引先に対しても、本規範に沿ったサステナビリティ調査、責任ある鉱物調達調査などを通じて人権尊重の取り組み推進を要請しています。

2021年度に社外有識者の協力のもと、国内グループ会社を対象として、人権リスクアセスメント(事業活動が人権に及ぼす潜在的・顕在的なリスクの影響度評価)を実施しました。また、その結果、当社の業種や事業形態に則した18の人権リスクを特定しました。

キオクシアグループにおける潜在的な人権リスク

労働・雇用

  • 強制労働(適切な賃金を含む、サプライチェーンを含む)
  • 障がい者の雇用不足
  • 性的マイノリティへの配慮不足
  • 長時間労働(サプライチェーンを含む)
  • 外国人労働者への権利侵害(技能実習生を含む)
  • 労働者へのハラスメント

安全衛生

  • 感染症関連リスク
  • 労働災害
  • メンタルヘルス不調

環境

  • 周辺住民の住環境への負の影響

倫理

  • 人権侵害が懸念される鉱物の調達(希少金属の新規利用を含む)
  • 人権侵害が懸念される国における顧客との取引
  • サプライヤー教育の不足
  • 苦情処理メカニズムの未整備・機能不全(調達取引先を含む)
  • 製品の不具合によるエンドユーザーへの影響
  • 人権侵害国への技術漏洩・人権侵害を及ぼす用途への悪用
  • データ改ざんによる製品の安全性などへの影響
  • 人権侵害の懸念がある広告

人権リスクの防止・軽減に向けた取り組み

取り組み優先度の決定

キオクシアグループでは、前述の潜在的な人権リスクに対して、人権への負の影響の深刻度に加えて、自社の関与度や対応度も考慮して、目標や取り組み優先度を設定しています。

適切な措置の実行

キオクシアグループでは、人権デューデリジェンスに加えて、製造事業場におけるRBA監査結果なども活用して、以下の人権リスクの低減に取り組みました。

キオクシアグループにおける主な対策
  • 自社従業員

※表を左右にスクロールすることができます。

リスク項目 対応方針 取り組み事例・実績
強制労働(適切な賃金を含む)

労働者が自らの自由な意思で働く権利を保証します。

キオクシアグループ行動基準に、労働人権として、児童労働、強制労働などの不当労働を行わないこと、その防止・確認のために業界標準に基づくアセスメントを実施することを定め、採用・雇用プロセスの透明性を徹底します。

  • 採用時に、政府発行の顔写真付きIDによる年齢確認を徹底。児童労働発覚時の救済手順を社内規程化(キオクシア(株))
公正な評価・処遇の基本方針のもと、関連法令を遵守し、法定賃金以上の賃金を支払います。また、労働者の雇用区分や性別などにかかわらず、同一労働・同一賃金とします。
  • 就業規則における懲戒処分の内容を一部改訂(キオクシア(株))
  • 労使で法定を上回る独自の最低賃金の協定を締結(キオクシア(株) / キオクシア岩手(株) / キオクシアエンジニアリング(株))
  • 2024年度の非正規従業員の賃金水準は、正規従業員の103.5%(キオクシア(株))
外国人労働者への権利侵害
(技能実習生を含む)
労働者の国籍にかかわらず、平等な権利と適切な労働条件を提供します。
  • 外国人労働者に母国語または本人が理解できる言語で雇用契約・給与明細を提供。採用時の本人負担費用に関する調査・対応の書面改訂。(キオクシア(株))
障がい者の雇用不足
性的マイノリティへの配慮不足
キオクシアグループ行動基準に差別が起きない健全な職場環境づくりと多様性の尊重について定め、全従業員に周知徹底し、教育を実施します。
  • LGBTQ+などへの差別防止について、全従業員にe-ラーニング教育を実施
長時間労働 労働時間、休日、休憩の付与について、各国・地域の法令の遵守および国際規範への適合に努め、従業員の健康とワークライフバランス向上を目指します。また、従業員の労働基本権を保障するとともに、労使対話を通じて適正な労働条件を確保します。
  • 管理者が個々の従業員の年間の時間外実績を一覧で確認できるシステムを導入(国内グループ会社)
  • 年次有給休暇の取得を推進。長時間労働者に対しては産業医による面談を実施(国内グループ会社)。
  • 労使で毎月時間外申請を確認するなど日常的に長時間労働について協議(キオクシア(株))
労働者へのハラスメント キオクシアグループ行動基準にハラスメントが起きない健全な職場環境づくりについて定め、全従業員に周知徹底し、教育を実施します。
  • ハラスメント防止について、全従業員にe-ラーニング教育を実施。
メンタルヘルス不調 従業員の心身の健康増進を目的に、健康経営を推進し、ストレス関連疾患の予防を目標の一つに掲げ、メンタルヘルス教育を実施し、相談体制を整備します。
  • 2024年度、メンタルヘルスについて全従業員にe-ラーニングを実施。さらに、国内グループ会社では、役員・管理職を対象とした教育を拡充。
  • 2024年度、メンタルヘルス中期目標を設定(キオクシアホールディングス(株)、キオクシア(株))
  • 社外パートナーとの協働

※表を左右にスクロールすることができます

リスク項目

対応方針

取り組み事例・実績

サプライチェーンにおける人権尊重

各国・地域の法令や社会規範を遵守し、調達取引先との相互理解と信頼関係構築を通じて、サプライチェーン・マネジメントに取り組み、サプライチェーン全体で持続可能な調達活動の推進を目指します。調達取引先にRBA行動規範に沿った責任ある事業の推進を要請し、サプライチェーンにおける労働者の人権、安全衛生、環境などの課題に配慮した事業遂行に努めます。
また、調達取引先との協業により、国際規範に則して、責任ある鉱物調達(錫、タンタル、タングステン、金、コバルトなど)を推進します。

  • 2022年度から派遣会社・請負会社を含む調達取引先へのRBA行動規範の周知とモニタリングを継続。
  • 2024年度、請負会社の協力により、サプライチェーンの外国籍移民労働者を対象とした雇用関連費用の払い戻しを実施。

苦情処理メカニズムの未整備・機能不全
(調達取引先を含む)

各国・地域の法令やキオクシアグループ行動基準、社内規程の違反のおそれがある場合に、サプライチェーンを含むすべてのステークホルダーが報告し、相談できる窓口を設置します。

  • サプライチェーンにおける人権問題への対応を強化するため、第三者窓口JaCER*2による通報受付の仕組みを導入(2025年4月~)。

周辺住民の住環境への負の影響

事業場周辺の住民との対話を重視します。また、自然資本への負の影響を低減し、周辺環境への配慮や保全活動を継続的に実施していきます。

  • 工場周辺の交通渋滞対策として、誘導員の配置などにより渋滞を緩和。
  • 操業を行う地域の豊かな生態系と共存するため、生物多様性保全と社会貢献を目的とした活動を推進。
  • *2 一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)。

追跡調査

キオクシアグループは、キオクシア人権方針の内容の遵守状況について定期的にモニタリングし、是正活動の進捗と効果を確認しています。
また、社会からの要請やステークホルダーとの対話、当社グループの事業の状況に応じて、適宜、人権方針や取り組みに反映していきます。

情報開示

キオクシアグループは、人権尊重の取り組み状況を自社のウェブサイトで毎年更新しています。

人権を尊重するための教育・啓発

キオクシアグループでは、全従業員を対象に毎年、人権やハラスメントに関する教育を実施しています。この教育を通じて、2024年度はLGBTQ+をテーマに取り上げた他、国際的に求められる人権についての意識啓発を図りました。また、ハラスメント相談窓口についても周知徹底しています。
2024年度の教育実績は以下のとおりです。

人権尊重にかかわる教育実績(2024年度)

※表を左右にスクロールすることができます

テーマ

対象

実績

人権教育

キオクシアグループ

キオクシアグループにおける基礎教育の一環として、全従業員を対象に実施し、受講率100%

障がい者への理解促進

キオクシア岩手(株)

役職者や中堅従業員を中心に、障がい者など多様な人材が活躍できる風土醸成を目的としたダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)ワークショップを2回実施し、約100名が参加

性的マイノリティへの理解促進

キオクシア(株)

人事担当者向けに教育を実施

ハラスメント防止

キオクシア(株)

  • 本社、横浜テクノロジーキャンパスで、役職者向けにハラスメント防止教育を実施
  • 入社時の基礎教育の一環として、新入社員全員にハラスメント防止教育を実施
  • 採用活動にかかわる従業員に、採用活動におけるハラスメント防止教育を実施

対話(ステークホルダー・エンゲージメント)

前述の対策や調達取引先へのキオクシアグループサプライチェーン行動規範の説明など日々の事業活動やサステナビリティレポートを通じて、ステークホルダーの皆さまに、キオクシアグループの人権尊重の取り組みを伝え、対話を行っています。

通報・相談窓口の設置(救済)

キオクシアグループは、各国・地域の法令やキオクシアグループ行動基準、キオクシア人権方針、その他社内規程の違反のおそれがある場合に、従業員やビジネスパートナーを含むステークホルダーの皆さまが報告し、相談できる窓口を設置しています。
各通報・相談窓口では、通報者のプライバシー保護および秘密保持を厳守し、通報者や関係者が通報したことにより不利益を受けないことを保証しています。通報内容については中立公正に事実確認を行い、適正な措置を実施しています。

従業員向け通報窓口「ハラスメント相談窓口」

国内グループ会社では、パワーハラスメントやセクシャル・ハラスメントなどのハラスメントについて、従業員などが相談できる「ハラスメント相談窓口」を設置しています。イントラネットや全従業員を対象とした教育などを通じて通報窓口を周知しています。
2024年度に本窓口で受け付けた通報・相談は33件でした。受付案件のうち、不適切な状況がある、またはそのおそれがある場合は、相談者の承諾を得た上で、関係部門への改善指示や注意喚起を行っています。

社外ステークホルダーからの通報窓口:JaCER

キオクシアグループは、サプライチェーンを主な対象に、JaCERの苦情通報フォームより、人権侵害のおそれのある案件に関する通報・相談を受け付けています。JaCERは、指導原則に準拠して、非司法的な苦情処理プラットフォームを提供し、専門的な立場から会員企業の苦情処理の支援・推進を目指す組織です。
通報フォームは日本語、英語、中国語の3言語が設けられています。また、通報者が安心して利用できるよう匿名での通報も可能です。受付事案については、適正な措置を行い、その進捗・結果はJaCERウェブサイト上の苦情処理案件リストで公開されます。

JaCERの苦情通報フォーム

その他の通報窓口については以下をご覧ください。

苦情処理メカニズムの再構築

キオクシア(株)は2024年度に、社内外のステークホルダー向けのより信頼性が高い苦情処理メカニズムの再構築に取り組みました。2023年度の各種通報・相談窓口の受付状況を調査し、先述の18の人権リスクごとに受け付けた案件について分析を行いました。その結果をもとに、サプライチェーンにおける人権問題への対応を強化するため、2025年4月に第三者窓口JaCERによる通報受付を開始しました。
今後、主に調達取引先に対してこの窓口の周知を進め、バリューチェーン全体で人権尊重の取り組みを推進していきます。

社外イニシアティブへの参加

キオクシアグループは、人権課題に対する広範で実効性の高い苦情処理メカニズムの構築を進めています。キオクシア(株)は2022年11月に、業界共通で苦情処理のプラットフォーム構築を目指すJaCERの理念に賛同し、賛助会員になりました。2024年度は、本機構への参画を通じて、業界の最新動向を把握するとともに、在るべき自社の仕組みづくりについて検討し、2025年4月に正会員になりました。