持続可能なサプライチェーン

サプライチェーンにおける企業の社会的責任について、社会の関心は年々高まっています。キオクシアグループは、グループ行動基準に公正な事業運営を掲げるとともに、持続可能なサプライチェーンをサステナビリティ重要課題(戦略マテリアリティ)の一つに定め取り組んでいます。
当社グループに加えて、調達取引先との協働により、サプライチェーンにおける労働者の人権、安全衛生、環境などの課題に配慮した事業を遂行し、ビジネスリスクの低減と持続可能な調達活動の実現を目指しています。

キオクシアグループのサプライチェーン

地域別 調達額比率(2022年度、金額ベース)

海外 50%、日本 50%

キオクシアグループは、各国・地域からさまざまな原材料や資材を調達しています。2022年度は約700社と調達取引を行い、海外からの調達額比率*1は50%を占めています。

  • *1 海外の取引には、外資系企業日本法人からの調達額を含みます。

キオクシアグループの調達方針

キオクシアグループは、各国・地域の法令や社会規範を遵守し、調達取引先との相互理解の促進と信頼関係の構築を通じて、サプライチェーン・マネジメントに取り組み、サプライチェーン全体で持続可能な調達活動の推進に努めています。
当社グループは、調達取引先に対し、「キオクシアグループ調達方針」の遵守とサプライチェーンにおける責任ある事業の推進を要請しています。
また、責任ある事業の推進については「キオクシアグループサプライチェーン行動規範」、化学物質管理については「キオクシアグループグリーン調達ガイドライン」、鉱物調達については「キオクシアグループ責任ある鉱物調達方針」を定め、関連する調達取引先へ周知し、それらに基づく適切な対応を求めています。

サプライチェーン・マネジメントの推進体制

キオクシアグループは、調達取引先との取引の適正化とサプライチェーン・マネジメントに取り組んでいます。キオクシア株式会社では、本社調達部に企画担当を設置し、サステナビリティ部門、環境関連部門、人事総務部門、関係会社などと連携して、調達取引先まで含めた人権・労働・安全・環境・その他事業リスクへの対応を図っています。重要な事項については、適宜サステナビリティ推進委員会へ上程しています。

業界団体・イニシアティブへの参画

キオクシアホールディングス株式会社は、グローバルサプライチェーンにおける労働・安全衛生・環境・倫理などの社会的責任を果たすため、2021年にRBA(Responsible Business Alliance) *2に加盟しました。レギュラーメンバーとして、RBAの行動規範に沿った責任ある事業遂行(自社サステナビリティ活動の推進、および調達取引先への要請)に取り組んでいます。

  • *2 RBA(Responsible Business Alliance):責任ある企業同盟(旧Electronic Industry Citizenship Coalition)。

また、責任ある鉱物調達をキオクシアグループ全体で推進しています。キオクシアホールディングス株式会社ではRBA傘下の責任ある鉱物調達に関わるイニシアティブであるRMI(Responsible Minerals Initiative)に、キオクシア株式会社ではJEITA(電子情報技術産業協会)の責任ある鉱物調達検討会に参画しています。

調達取引先とのアセスメントとモニタリング

新規取引先アセスメント

新規に取引を開始する際は、調達取引先に当社グループの調達方針ならびにサプライチェーン行動規範を含む持続可能な調達に関する方針を周知しています。調達取引先の労働・安全衛生、環境や工程の管理体制、法令遵守、経営状況などが当社グループの調達取引先選定基準に則しているかを確認の上、調達取引先との合意に基づく取引を行っています。

サプライチェーンモニタリング

調達取引先との取引継続に際しては、取引規模などを参考に取引先を選定し、RBAが提供する自己診断票(RBA-SAQ*3)の実施を依頼しています。調達取引先におけるRBA行動規範への適合状況を把握し、サプライチェーン・マネジメントの徹底を図っています。RBA-SAQでハイリスク判定となった調達取引先に対しては、当社グループの調達担当者によるヒアリング調査を行い、必要に応じてRBA第三者監査の受審を依頼するなど是正を要請しています。また、随時実施している品質監査において、調達取引先の製造現場の管理状況を確認し、必要に応じて改善の要請や取り組みの支援をしています。

  • *3 RBAが提供する自己診断票。労働・安全衛生・環境・倫理・マネジメントシステムから成り、当社グループは企業全体を対象とするCorporateと各工場を対象とするFacilityの2種類の自己診断票を併用しています。

サプライチェーンモニタリングの実績 (2022年度、国内グループ)

※表を左右にスクロールすることができます。

  調査
(社数)

回答

(件数)

リスク判定結果(件数)

是正依頼

(件数)

ローリスク
(回答数)
ミディアムリスク
(回答数)
ハイリスク
(回答数)
RBA-SAQ*4
(Corporate)
53 53 48 5 なし なし
RBA-SAQ*4
(Facility)
49 117 112 5 なし なし
  • *4 RBAオンラインによるRBA-SAQ回答。

責任ある鉱物調達について

2010年に米国金融規制改革法(ドッド・フランク法)において紛争鉱物問題に関する1502条が成立した後、キオクシアグループは顧客である米国上場企業のサプライチェーンに連なる企業として、コンゴ民主共和国およびその周辺国で採掘された錫、タンタル、タングステン、金(以下3TG)が反社会的勢力の資金源となっていないことを確認すべく、取引先企業を通じた精錬所の調査に取り組んできました。

2021年3月当社グループは、先述の地域に加え、紛争地域および高リスク地域(通称CAHRAs)における、紛争、人身売買、奴隷、強制労働、児童労働、虐待、戦争犯罪などの非人道的行為に関わる、3TGおよびコバルトの使用禁止について「キオクシアグループ責任ある鉱物調達方針」に定め、責任ある鉱物調達を推進しています。

キオクシアグループ鉱物調達推進体制

キオクシア株式会社の本社調達部門、営業部門、技術部門、IT部門など関係部門からなる特定部材調達タスクフォースでは、「キオクシアグループ責任ある鉱物調達方針」に沿って取り組みを推進し、重要な事項についてはサステナビリティ推進委員会へ上程しています。

鉱物調査の取り組み

キオクシアグループは、当社グループへの納入品に使用される3TGやコバルトなど鉱物の使用状況に応じて、サプライチェーンの精錬所情報の調査を実施しています。当社グループは調達取引先に対して、RMIによる認証を受けた精錬所(RMAP:Responsible Minerals Assurance Process)から100%調達するよう要請するとともに、サプライチェーン上にある精錬所が3TGをコンゴ民主共和国およびその周辺国、紛争地域および高リスク地域から鉱物調達している場合、調達取引先に対して対象精錬所の特定を求めています。

国内グループでは2022年度、3TGを使用している可能性のある調達取引先69社に対して、RMI作成のCMRT(Conflict Minerals Reporting Template)による精錬所調査を実施しました。しかし、2022年度は、年次調査の期限にあたる2023年1月末以降に、多数のRMAP認証済み精錬所がRMIの認定から除外されたため、RMAP認証済みまたは監査中の精錬所*5からの調達割合は一時的に下がりました(2023年3月末時点で71%)。その後もRMIによる精錬所の精査が継続していますが、国内グループではコンフリクトフリー調達の実現を目標に調達取引先との協議を進めています。
また、ステークホルダーからの要請を踏まえ、調査対象鉱物にコバルトを加え、2022年度は調達取引先30社を対象にRMIのEMRT(Extended Minerals Reporting Template)による精錬所調査を実施しています。

  • *5 RMAPにおけるConformantまたはActiveの精錬所。

鉱物調達モニタリングの実績 (2022年度、国内グループ)

※表を左右にスクロールすることができます。

  調査期日 調査社数 調査結果(対回答件数) 取引停止社数
回答件数 適合件数*6 調査継続件数 適合不可件数
CMRT調査
(3TG)
2023年3月末 69社
(回答率100%)
119件 85件
(71%)
34件
(29%)
0件
(0%)
0社
EMRT調査
(コバルト)
2023年4月末 30社
(回答率100%)
36件 34件
(94%)
1件
(3%)
1件
(3%)
0社
  • *6 RMAP適合(ConformantまたはActive)精錬所のみ使用した、もしくは対象金属の使用が無い調達取引先の鉱物調査回答件数とその割合。

グリーン調達の取り組み

キオクシアグループは、「キオクシアグループ環境方針」に持続可能な社会の実現へ向けた環境面での貢献を掲げています。
キオクシア株式会社では、環境・品質・調達部門を中心とした「グリーン調達ワーキンググループ」を立ち上げ、グリーン調達に取り組んでいます。「キオクシアグループグリーン調達ガイドライン」に、環境負荷の少ない資材の選定や含有化学物質管理に関する当社グループの管理基準や調達取引先に対する具体的な要請事項を定めています。各国・地域の法令や規則、顧客からの要請などを反映するべく、本ガイドラインを適宜更新しています。
また当社グループは、設計開発段階から化学物質による環境影響のアセスメントを徹底的に行い、環境負荷の低い部材を使用することで、環境負荷の低減に努めています。
これらの取り組みを通じて、当社グループは調達取引先と環境保全活動に関する課題の共有化・相互協力を行い、より良い地球環境の実現に貢献していきます。

グリーン調達モニタリングの実績 (2022年度、国内グループ)

取引先回答
(社数)

回答企業の拠点
(地域別)

環境調査票
(RBA Environmental Survey)

21社

米国(8社)
日本(6社)
台湾(4社)等

持続可能な調達に関する従業員の教育

国内グループでは、調達におけるコンプライアンス強化のため、全役員・従業員を対象にした下請法などに関する基礎教育を実施しています。また、調達部門において、発注者認定教育制度に基づく関連法令ならびに規程の遵守に関する専門教育を実施しています。
さらに、持続可能なサプライチェーンの実現を目的として、調達部門、営業部門、技術部門を中心に、人権・労働などサプライチェーンにおけるグローバルな社会的課題やRBA行動規範、当社グループの持続可能な調達活動について定期的に研修を行っています。

サプライチェーンリスクへの対応

調達取引先が当社グループの調達方針やサプライチェーン行動規範に定める調達取引基準などに違反した場合、調達取引先やサプライチェーンにおけるサステナビリティ関連リスクが確認された場合、新たな法規制や社会的要請により対応が必要になった場合など、当社グループは該当する調達取引先に改善・対応を要請します。それらの調達取引先に対して是正指導・支援を行い、是正が困難と判断された場合には、取引を停止します。

なお、当社グループでは2022年度、サステナビリティ関連リスクにより取引停止となった調達取引先はありませんでした。

BCM*7(事業継続マネジメント)におけるサプライチェーンからの供給確保

キオクシアグループでは、地震や自然災害、事故に加え、パンデミックなどの緊急事態による事業の中断を回避するために、調達取引先の複数化や有事の際に備えた緊密な連携に努めています。キオクシア株式会社および主要グループ会社*8では、BCM管理規程のもと、平時よりサプライチェーンの状況把握に努めることで、有事の際に影響を迅速に把握するとともに、早期復旧に向けて連携する体制を整備しています。また、主要な調達取引先に対してBCMのアセスメントを行うことで、BCMの深耕に取り組んでいきます。

  • *7 BCM: Business Continuity Managementの略で、緊急事態の発生時においても事業を停止させることなく(あるいは停止しても短期間で復旧させて)組織への影響を最小限に抑えるための対策計画の策定から、その導入・運用・見直しという継続的改善を含む、包括的・統合的な事業継続のためのマネジメントのこと。
  • *8 キオクシアグループの国内外の関係会社20社(2023年8月時点)。