社長メッセージ
「『記憶』で世界をおもしろくする」ミッションの実現へ
ステークホルダーの皆さまとの対話を深め、期待にお応えします
キオクシアホールディングス株式会社
代表取締役社長
早坂 伸夫
上場企業としての新たなスタートラインに立って
私たちの事業の原点は、キオクシアの前身である東芝で1987年に発明されたNAND型フラッシュメモリです。以来、2007年に世界で初めて3次元フラッシュメモリ技術を発表するなど、数多くの「世界初」を積み重ね、革新的な技術でデジタル社会の発展に貢献してきました。
企業としては、2018年に東芝グループから独立し、2019年にキオクシアにブランド名を刷新しました。その後も会社としての発展を続け、2024年12月に東京証券取引所プライム市場への上場を果たしました。株式上場は当社グループの成長の一つのマイルストーンであり、これを従業員の皆さんと共有できたことは、経営者としての感慨もひとしおでした。
私たちは上場企業としての新たなスタートラインに立ったところですが、ステークホルダーの皆さまの大きな期待を感じています。継続的な会社の発展、企業価値の向上でこのご期待に応えていかなければならないと、身の引き締まる思いです。
2024年度の業績と今後の展望
2024年度は需要の回復やデータセンター、エンタープライズSSD向け販売の拡大により、売上収益、Non-GAAP営業利益、Non-GAAP当期利益のいずれも、2018年度の東芝グループからの独立以来最高の業績を達成しました。
当社の業績は、2020年からのコロナ禍での在宅勤務の普及などによるPCやスマートフォン向けの売上拡大によって堅調でしたが、2022年から2023年にかけてはその反動で需要が急減し、当社グループは過去にない厳しい時期を経験しました。そのような局面では、他社に先駆けた生産調整や、コスト削減を行うとともに、将来に向けた研究・技術開発部門の再編などにも機動的に対応しました。2024年度に入り生成AIの発展を背景としたメモリ需要の回復とともに当社グループの業績も回復、特にデータセンター、エンタープライズ向けSSDの売上が拡大し好業績につながりました。
フラッシュメモリの今後の成長の鍵を握るのは生成AIです。スマートフォン、PC、データセンターといった主要市場では、いずれも生成AIの活用が加速しており、大容量、高速、低消費電力なフラッシュメモリ・SSDの需要が拡大すると見込んでいます。調査会社によれば、特にデータセンター向けフラッシュメモリの需要は年率26%の成長が見込まれます。中でも推論向けAIサーバーが伸長し、2029年にはデータセンター向けフラッシュメモリの需要の4割以上はAIサーバー向けとなる見通しです※。
このような事業機会を成長に結びつけていくためには、競争力のある製品の開発と生産能力の強化が必要であると考えています。そのための必要な投資を見極めて、タイムリーかつ積極的に行っていきます。
- 出典:TechInsights Inc.「NAND Market Report Q2 2025」
キオクシアグループの競争力の源泉
当社グループの競争力の源泉であり、持続的成長を支える重要な経営資本は、テクノロジー(技術力)、スケール(生産規模)、パートナーシップと、これらを支える人材です。
1つ目はテクノロジーです。当社グループはNAND型フラッシュメモリの発明以来、フラッシュメモリのテクノロジーリーダーとして、常に技術の転換点を創り出してきました。当社の3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH™」の開発や、直近ではCBA(CMOS directly Bonded to Array)技術の導入、新しいコンセプトの半導体メモリ・ストレージ開発など新たな発想の研究開発にも取り組んでおり、今後もテクノロジーリーダーシップを発揮していきます。
2つ目は四日市工場・北上工場が連携して発揮するスケールです。最先端の2つの工場の連携、25年以上にわたる米国Sandiskグループとの協業を通じてスケールメリットを享受し、全世界に供給されるフラッシュメモリのおよそ30%を生産しています。
3つ目はお客様や取引先の皆さまとのパートナーシップです。スマートフォンやPC、サーバー市場のリーディングカンパニーをお客様に持ち、半導体製造装置メーカーや材料メーカーなどの取引先の皆さまと強固な関係を構築していることが、当社グループにとっての大きな強みと言えます。
そして、これら3つを支えているのが、研究・技術開発、製造、販売・マーケティングなどの各分野で活躍する、経験・スキルを持った人材です。当社グループの今後のさらなる成長に向けては、このような人材の継続的な採用、教育が重要であると考えています。私は経営者として、これまでも採用と教育には強いこだわりを持って取り組んできました。今後は従業員との対話も深め、当社グループの未来を支える人材の育成に全力を尽くします。
私たちは今後も競争力を高めるために、これらの「テクノロジー」「スケール」「パートナーシップ」を発展させ、多様なスキル、バックグラウンドを持った人材がシナジーを創出し、当社グループが持続的に成長するサイクルをつくっていきます。
ミッション実現に向けて
私たちは、「『記憶』で世界をおもしろくする」ことをミッションに掲げています。急速に進んだデジタル社会の発展を振り返ると、デジタルカメラやスマートフォン、インターネットサービスの発達など、市場の高度化・多様化とともに人々が生成・処理するデータの量は増え続けてきました。私たちのフラッシュメモリ技術は社会の発展とともに進化しており、私たちが提供するフラッシュメモリ・SSD製品がこれまでのデジタル社会の進展に貢献してきたという自負があります。
そのデジタル社会の進展において、私は、データを「保存する」ことからデータを「高度に活用する」時代の到来を予測し、事業展開を進めてきました。生成AIのような技術が現実のものとなり、まさにそのような時代が訪れていると感じます。
今後さらに生成AIの活用が広がる中、当社グループは、デジタルデータが多様な形で高度に活用されるための基盤を提供し、持続的な社会の発展に貢献します。例えば、データセンターの増加に伴う電力消費量の増加という社会課題に対して、低消費電力な製品の開発でこの解決に貢献するなど、環境配慮に優れた製品の提供は極めて重要であると考えています。「記憶」の技術で、持続可能な社会を支え、人々の日々の暮らしを便利にし、そして可能性を広げた先に「おもしろい」世界の実現があると考えています。
ステークホルダーの皆さまへ
当社グループが今後も「記憶」のテクノロジーリーダーとして企業価値を高め、成長を続けていくためには、ステークホルダーの皆さまとの対話を深め、その結果を事業活動にフィードバックするサイクルを構築することが重要です。本年から統合報告書を発行しますが、コミュニケーションツールの一つとして、積極的に活用していきます。
ステークホルダーの皆さまにおかれましては、ぜひ本書にお目通しいただき、「『記憶』で世界をおもしろくする」ミッションの実現に取り組む当社グループにご期待ください。
- 本ページは統合報告書2025「社長メッセージ」より転載しています。
2024年度(2024年4月1日~ 2025年3月31日)